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2026.10.21 データベース

基幹システム停止に備える代わりの台帳|受注・出荷・在庫の最小セット

基幹システムが止まった日に受注と出荷を最低限回すには、平時のうちに「代わりの台帳」を用意し、入力する人を決め、年に1回は実際に入力してみておくことです。台帳は受注・出荷・在庫を中心に、自社が止められない業務の最小限で組みます。止まってから作り始めると、項目や担当を決めるところで手が止まります。

止まる原因はランサムウェアに限りません。サーバーの故障、停電や災害、回線の不通でも同じことが起きます。この記事では原因を問わず、システムが戻るまでの間に業務をつなぐ台帳の作り方を、紙・表計算・Webデータベースを並べて整理します。

いま被害を受けている場合

サイバー攻撃の被害を受けている、またはその疑いがある場合は、まず警察のサイバー事案に関する相談窓口(都道府県警察の連絡先)、IPAのサイバーセキュリティ相談窓口、契約しているセキュリティ事業者や保険会社に相談してください。

被害時の技術的な対応は、警察・IPA・契約中のセキュリティ事業者や保険会社の指示に沿って進めます。この記事は、平時に済ませておく業務継続の準備を扱います。

本記事の後半で紹介するPigeonCloudは、運営元の株式会社ロフタルが提供するWebデータベースです。紙や表計算で作る方法も同じ基準で並べます。

この記事で分かること

  • システムが止まった直後に受注・出荷・在庫で起きること
  • 代わりの台帳に置く項目の最小セット(表つき)
  • 入力する人と見られる人の決め方
  • 平時に済ませておく4つの準備
  • 紙・表計算・Webデータベースの向き不向き

基幹システムが止まると、受注・出荷・在庫で何が起きるか?

最初の数時間で困るのは、システムの中にしかない情報です。今日出荷する予定の注文、取引先ごとの単価、どの棚に何がいくつあるか。普段は画面を開けば分かるものが、急に分からなくなります。

受注:電話やFAXで届いた注文を書き留める場所がなく、担当者の手元のメモに散らばる。

出荷:出荷指示や納品書が出せず、何をどこへ送ったかの記録が残らない。

在庫:画面上の数字が使えず、引き当てや欠品の判断ができない。

しかも、止まった状態が短く終わるとは限りません。警察庁が2026年9月に公表した「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」では、同期間のランサムウェア被害の報告は123件でした。

復旧期間(有効回答48件)

1か月未満:23件
1か月〜2か月未満:4件
2か月以上:8件
復旧中:13件

40件中29件

バックアップについて回答があった40件のうち、バックアップから復元できなかった件数

どちらも回答のあった件数が母数で、123件全体の割合ではありません。1か月未満で復旧した例が半数近くある一方、2か月以上かかった例や調査時点で復旧中の例もあり、バックアップがあっても戻せなかった例も含まれます。機器の故障や災害でも、部品や代わりの機械が届くまで待つ日は出ます。戻るまでの間をどう回すかは、原因を問わず平時に決めておく話です。

代わりの台帳は受注・出荷・在庫の3表から始める

代わりの台帳の目的は、「注文を受けた事実」「出したもの」「手元にある数」を、システムが戻った後に突き合わせられる形で残すことです。受注・出荷・在庫の3表は一般的な出発点で、自社が止められない業務に合わせて表や項目を足し引きします。出荷前に要る契約・決済・承認の条件は平時に決めた手順で確かめ、分析のように後でよい処理とは分けておきます。

台帳項目の例決めること
受注仮番号、受付日、取引先、品番と数量、元の控えの所在(ほか納期・受付者)仮番号の付け方
出荷出荷日、仮番号、品番と数量、送り先、送り状番号納品書の出し方
在庫品番、置き場、数えた数、数えた日時と人数える順番

在庫は、止まる前の画面の数字ではなく、棚で数えた数から始めます。止まった時点の数字が正しいかを、その場では確かめられないためです。全品目を一度に数え直す必要はありません。今週出荷する品目から順に数え、引当・ロット・期限・検査状態など、自社で出荷に必要な条件が確かめられた品目だけを出荷の対象にします。

受注台帳の「元の控えの所在」は地味ですが、後で効きます。FAXの原本をどの箱に入れたか、どのメールで受けたかを書いておけば、システムへ戻すときの突き合わせが早く済みます。在庫の台帳の作り方そのものは、在庫管理を見える化する5つの手順で、商品台帳と入出庫履歴を分ける考え方を解説しています。

データを移す前に:安全が確かめられていない端末・アカウント・バックアップから、代わりの台帳へデータを移さないでください。紙の控え、取引先から改めて受け取った注文書、棚で数えた数など、確かなものだけで最小限を回します。何が安全かの判断は、相談先の専門家に委ねます。

誰が入力し、誰が見られるようにするか?

止まった日は、普段の担当者が全員そろっているとは限りません。台帳ごとに「入力する人」と「見るだけの人」を分け、それぞれに代わりの人を1人ずつ決めておきます。

台帳入力(正・副)閲覧のみ
受注受注窓口の担当2名営業、出荷担当
出荷出荷場の責任者と、その代わり受注窓口、営業
在庫倉庫の担当2名受注窓口、出荷担当

表は架空の例です。人数が少ない会社では、1人が2つの台帳を持っても構いません。避けたいのは、全員が全部を書き換えられる状態です。止まった日の慌ただしさの中で、誰がいつ数字を変えたか分からなくなると、戻した後の突き合わせで迷います。

台帳全体の管理者も1人決めます。項目を足す、入力する人を入れ替えるといった判断は、その人に集めます。

平時に済ませておく4つの準備

台帳は作っただけでは使えません。止まった日に迷わず開ける状態まで、平時に持っていきます。

1空の台帳を作る

上の3表の項目で、空の台帳を作ります。紙なら様式を印刷して、決めた場所に保管します。データは入れず、器だけを用意します。

2担当を決めて書き残す

入力する人・見るだけの人・管理者と、それぞれの代わりを決めます。台帳の置き場所と開き方を1枚にまとめ、システムの外に置きます。

3年1回、実際に入力してみる

防災訓練の日などに、架空の注文を数件受けて出荷まで記録します。項目の過不足や、書きにくい欄がここで見つかります。

4代わりの端末とアカウントで開けるか確かめる

会社が事前に承認・管理している代わりの端末とアカウントで、台帳を開けるかを試します。紙なら、様式の保管場所に担当者がたどり着けるかを確かめます。被害時にどの端末を使うかは、相談先の専門家の指示を優先します。

4つ目は見落としやすい準備です。代わりの台帳を社内のファイルサーバーに置いていると、本来のシステムと一緒に開けなくなることがあります。置き場所を分けることが、代わりの台帳の役目そのものです。

紙・表計算・Webデータベースのどれで作るか

どれが正解というより、会社の規模と、止まった日に使える道具で決まります。それぞれに前提があるので、並べて比べます。

紙の様式

前提:印刷した様式と筆記具

向く場面:受注が1日数十件までで、拠点が1つ

注意点:複数人で同時に見られない。戻した後の転記に手間がかかる

表計算

前提:表計算ソフトが使える端末。共有するならクラウドの保管先

向く場面:担当が数名で、普段から表計算に慣れている

注意点:誰がどこを変えたか追いにくい。同時編集の条件を事前に確かめる

Webデータベース・SaaS

前提:インターネット回線と、ログインできる端末・アカウント

向く場面:拠点や担当が複数あり、入力する人と見る人を分けたい

注意点:回線と端末が使えなければ開けない。費用と契約が要る

組み合わせも現実的です。普段はWebデータベースに台帳を置き、回線も止まった時のために紙の様式も印刷しておく、という二段構えも取れます。表計算で同時編集をする場合の条件は、エクセルを共有して同時編集する方法にまとめています。

PigeonCloudで代わりの台帳を作る場合

PigeonCloudで作る場合に使える機能を、公式サイトに掲載されている範囲で挙げます(2026年10月21日時点)。

ほかの手段と同じく、回線とログインできる端末が前提です。アクセス元のIPアドレスを社内の回線に限っている場合は、止まった日に使う予定の回線から開けるかも、準備の4つ目で確かめておきます。

受注・出荷・在庫の代わりの台帳を、平時に作っておく

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本復旧の後、作り直しで見直すところ

システムが戻ったら、代わりの台帳の記録を正本へ戻します。仮受注番号と本来の受注番号の対応を残し、出荷済みの分と在庫の数を突き合わせます。代わりの台帳は消さず、突き合わせが終わるまで保管します。

そのうえで、止まっていた間に分かったことを、仕組みの見直しに使います。

一か所に寄りすぎていないか:受注・出荷・在庫が1台のサーバーや1つのファイルに集まっていて、どれか1つが止まると全部止まる構成になっていないか。

社外から入れる入口の数:社外から社内のシステムへつなぐ経路がいくつあり、誰が管理しているか。考え方は中堅企業がいま着手すべきレガシー刷新で整理しています。

Excel・Accessに残った業務:担当者のファイルにしかない取引先情報や単価表がないか。受発注の例は受託加工業のExcel受発注管理が限界に近づく3つのサインにまとめています。

止まった日に「これが見られなくて困った」と挙がった情報は、作り直しで真っ先に置き場所を考える候補です。受注の仕組みを製品で置き換える場合の比べ方は、受注管理システムの選び方と比較を参考にしてください。

よくある質問

代わりの台帳にも、普段のデータを毎日写しておくべきですか
必須ではありません。写すほど二重管理の手間が増えます。まずは空の台帳と担当を用意し、取引先や品番の一覧のように変わりにくい情報だけを、定期的に印刷や書き出しで残す形から始めます。
止まっている間の受注番号はどう付けますか
本来の番号と混ざらない仮番号を使います。頭文字を決めて連番にし、戻した後に本来の番号との対応を台帳へ書き足します。
在庫は全品目を数え直す必要がありますか
最初から全品目でなくて構いません。今週出荷する品目、出荷の多い品目の順に数え、数えた日時と人を残します。全品目は落ち着いてから棚卸しで確かめます。
練習はどのくらいの頻度で行えばよいですか
年1回を目安に、担当者が入れ替わった時にも行います。架空の注文を数件、受注から出荷まで記録し、迷った箇所を様式に反映します。
クラウドのサービスで作れば、平時の準備は要りませんか
クラウドでも、回線とログインできる端末が前提になります。紙の様式との併用や、別の端末で開けるかの確認をしておきます。どの手段でも平時の準備は残ります。

平時の業務継続計画を見直す方へ

株式会社ロフタルは、在庫・受注など、Excelや紙で回している業務のWebシステム化を受託しています。Excel・Accessのデータを取り込んで仕組みを作り直す相談も受けています。業務システムの見直しを相談する

出典

この記事を書いた人
石川 傑也 Takuya Ishikawa
アクセンチュア株式会社を退職後、スタートアップ企業のエンジニアとして様々なサービスの企画・開発に携わる。 その後、株式会社ロフタルを設立。これまでの経験を活かし、DX・業務改善を進めるサービスPigeonCloudを開発。

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