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2026.10.21 受託開発

Access・FileMakerを社外から使うには?棚卸しと移す順番

VPNでしか使えない社内システムは、まず「VPNの先で何が動いているか」を一覧にし、社外から毎日使い、止まると困る業務から1つずつ移すのが、外から入れる入口を減らす近道です。移した先も外から入れる入口になるため、多要素認証(2段階認証)・接続元の制限・脆弱性への対策を続ける体制を、選ぶ条件に入れます。

社内のサーバーに置いたAccessのファイル、FileMakerのデータベース、ファイルサーバーのExcel。社外や自宅からはVPNでつないで開く、という使い方は珍しくありません。この記事では、情シスを兼務している方や経営層の方に向けて、VPNの先にある業務の棚卸し表の作り方と、移す順番を整理します。

この記事で分かること

  • 警察庁の統計が示す「外から入れる入口」の位置づけ
  • VPNの先にある業務を書き出す棚卸し表の作り方
  • 移し先4種類の向き不向きと、選ぶときの条件
  • 移す順番の5ステップと、費用の考え方

なぜ今、VPNの先にある業務を見直すのか?

警察庁が2026年9月に公表した「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェアの被害報告は123件でした。半期の件数としては、統計を取り始めた令和2年下半期以降で最多です。

79件

被害報告123件のうち、中小企業の件数

18件

感染経路に有効回答のあった36件のうち、VPN機器の件数

29件

復元結果に有効回答のあった40件のうち、バックアップから戻せなかった件数

感染経路の有効回答36件の内訳は、VPN機器18件、リモートデスクトップ9件、その他9件です。同じ資料は、インターネットに露出した箇所から遠隔で侵入する手口が多くを占め、メールの添付ファイルによる感染は少なくなっていると説明しています。

ここから言えるのは「外から入れる入口は、守る対象として数えておくべき場所だ」ということです。VPNをやめれば安全になる、という話ではありません。攻撃の背景や、古い業務システムが狙われやすい理由はAI時代のレガシー刷新の記事で詳しく扱っています。この記事は、その次の実務の手順です。

機器の対策は公的機関の情報で:VPN機器そのものの更新や設定の確認は、JPCERT/CCの注意喚起、IPAのランサムウェア対策特設ページ、警察庁のランサムウェア被害防止対策を確認してください。この記事は、VPNの先にある業務の側を扱います。

VPNの先で何が動いているか、棚卸し表を作る

最初の作業は、VPNを通さないと使えない業務を書き出すことです。システム名ではなく「業務」の単位で書くと、移すかどうかを判断しやすくなります。書き出す項目は次の5つです。

項目書き方
業務と道具「受注の登録(Access)」のように、業務名と今の道具を並べる
使う人部署と人数。取引先など社外の人が触るかどうかも書く
使う頻度社外から使う頻度。毎日・週に数回・月に数回・ほぼ無し の4段階
止まると止まった時に困り始める時点。当日・数日後・締め日 など
データ個人情報・取引条件・社外秘の有無。移し先の選び方に効く

埋めるとこうなります。以下は説明のための架空の例です。「止まると」は困り始める時点です。

業務と道具頻度止まるとデータ
受注台帳
Access
毎日当日取引先
見積書の共有
Excel
週数回数日後取引条件
顧客カルテ
FileMaker
月数回数日後個人情報
給与計算
パッケージ
ほぼ無し締め日個人情報

この例なら、毎日社外から使う受注台帳が最初の候補です。給与計算のように社外から使わない業務は、無理に移さず、VPNで外から触れる対象から外す選択肢もあります。

移行を相談するときも、この5項目が分かっていると話が早く進みます。道具の名前より先に、誰がどこから使い、止まると何が起きるかを押さえておくと、移し先の候補を絞りやすくなります。

移し先は4つ。どれが向いている?

棚卸しで「移す」と決めた業務は、次の4つのどこかへ移します(表ではWebデータベースをWeb DBと略します)。どれが正解というより、業務の決まり方とデータの重さで向き不向きが分かれます。

移し先向いている業務確かめること
SaaS業務ごとの製品。勤怠・経費精算など、やり方が世の中で揃っている業務自社のやり方を製品に合わせられるか
Web DBAccessやExcelの台帳を、項目と画面を保ったまま移したい業務計算や帳票の処理を組み直せるか
個別開発独自の計算や外部システムとの連携が多い業務作った後の更新と保守を誰が担うか
専用環境社内規程で、データの置き場所や他社との共有の有無が決まっている業務共用の環境より費用と運用の手間が増える点

ツールごとの詳しい比較は、Accessの代替ソフト比較とファイルメーカーの代替ツール比較にまとめています。Access 2021は2026年10月にサポートが終了しています(Microsoftのライフサイクル情報)。ソフトの更新時期と重ねて検討すると、二度手間を避けられます。

移した先も入口になる。選ぶときの4つの条件

VPNの内側にあったものをWebへ移すと、移した先もインターネットから届く入口になります。「外に出したら、かえって危ないのでは」という疑問はもっともです。だからこそ、機能の多さより先に次の4つを選定条件に入れます。

1多要素認証(2段階認証)を全員に求められる

2段階認証などパスワードだけに頼らない仕組みを、利用者全員に必須として設定できるかを確認します。

2接続元を制限できる

会社や拠点のIPアドレスなど、つないでよい場所を利用者ごとに絞れるかを見ます。

3脆弱性への対策を続ける体制を、提供側が公開しているか

脆弱性の点検や診断を続けていること、その方針が公開ページや契約で説明されているかを確かめます。

4権限と記録を後から確かめられる

誰が何を見られるかを分けられ、ログインや変更の記録を後から確認できるかを見ます。

どの条件も、機能があるだけでは足りません。必須にする設定を誰が入れ、退職者のアカウントを誰が止めるか。使う側が決めることは残ります。

Webデータベースで用意されている機能の例(2026年10月21日時点・PigeonCloud)

  • 2段階認証(テナント全体に必須化できる)
  • アクセス元のIPアドレス制限(全体またはユーザーごと)
  • ログイン、レコードの追加・更新・削除、権限や設定の変更などの記録
  • 脆弱性点検とコードレビューの継続的な実施

出典: PigeonCloud セキュリティへの取り組み・機能一覧。PigeonCloudは株式会社ロフタルのWebデータベースで、ロフタルはISO/IEC 27001:2022(ISMS)の認証を取得しています。

どの順番で移す?5つのステップ

一度に全部を移すと、問題が起きたときに原因を切り分けにくくなります。社外から使う頻度が高く、止まると困る業務を1つ選び、並行して動かしながら切り替えます。

1棚卸し表を埋める

VPNの先にある業務を5項目で書き出し、「移す・残す・やめる」に分けます。使われていない業務が見つかることもあります。

2最初の1業務を決める

社外から毎日使い、止まると当日困る業務を選びます。効果が見えやすく、社内の理解も得やすくなります。

3小さく作って並行稼働する

移し先に同じ台帳を作り、一定期間は旧システムと両方に入力します。数字が合うことを確かめてから切り替えます。

4旧システムへの社外からの経路を閉じる

切り替えた業務は、VPNで外から触れる対象から外します。ここまでやって初めて、入口が1つ減ります。

5残った業務を見直す

次の業務へ進む前に表を更新します。VPNの利用者が減れば、残す業務の管理も絞り込めます。

見落としやすいのはステップ4です。新しい仕組みを入れても、古いファイルへの経路が開いたままなら入口は増えただけになります。

Web化を相談したい方へ

棚卸し表が途中でも構いません。今の使い方を伺い、移し先の候補と概算をご提案します。

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費用と期間を左右する5つの条件

費用と期間は、移す業務の中身で大きく変わります。金額の相場を先に探すより、見積もりを左右する条件を把握しておくと、相談のときに話が早く進みます。

条件費用と期間が増えやすい例
画面と帳票の数入力画面や印刷する帳票が多い
計算と処理マクロやクエリで組んだ独自の処理が多い
連携会計ソフトや取引先のシステムとデータをやり取りする
権限の細かさ部署や担当ごとに見える範囲を分ける
データの整理重複や表記ゆれが多く、移す前の整理が必要

見積もりを比べるときは、初期の構築、データ移行、月々の利用料、保守を分けて並べます。費用の見方と相談前に用意するものは、Accessの業務システムを作り直す記事に詳しく書いています。

まとめとよくある質問

この記事の要点

  • VPNの先にある業務を5項目で書き出し、移す・残す・やめるに分ける
  • 社外から毎日使い、止まると困る業務から1つずつ移す
  • 移した先も入口になるため、多要素認証(2段階認証)・接続元の制限・脆弱性への対策を続ける体制・権限と記録を条件にする
  • 切り替えた業務は、旧システムへの社外からの経路を閉じて完了とする
Q.VPNをやめれば、ランサムウェアの被害は防げますか+
A.防げるとは言えません。入口は他にもあり、移した先も入口になります。棚卸しは、守る場所を把握して減らすための作業です。
Q.VPNのまま残す業務は、何に気をつければよいですか+
A.機器の更新と設定の確認を続け、使う人とアカウントを絞ります。機器の情報は、JPCERT/CCやIPAの注意喚起で確認します。
Q.全部の業務を移す必要はありますか+
A.ありません。社外から使わない業務は社内専用に残し、外から触れる対象から外す選択もあります。表の頻度の列で判断します。
Q.並行稼働はどのくらいの期間が必要ですか+
A.業務の周期で決めます。月末に締める業務なら、締めを少なくとも1回は両方で通し、数字が合うことを確かめます。
Q.棚卸し表ができていなくても相談できますか+
A.できます。今使っているファイルの種類と、社外から使う業務の名前が分かれば、そこから伺います。
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出典

この記事を書いた人
石川 傑也 Takuya Ishikawa
アクセンチュア株式会社を退職後、スタートアップ企業のエンジニアとして様々なサービスの企画・開発に携わる。 その後、株式会社ロフタルを設立。これまでの経験を活かし、DX・業務改善を進めるサービスPigeonCloudを開発。

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