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2026.10.17 データベース

セキュリティチェックシートの見方|SaaS選定の12項目

セキュリティチェックシートは、SaaSの安全性を「はい・いいえ」だけで採点する表ではありません。自社が扱う情報と止められない業務を起点に、候補サービスの対策、運用、契約条件を同じ軸で確認するための質問票です。

回答欄がすべて埋まっていても、対象範囲や例外条件が分からなければ判断材料は不足しています。ここでは、情シス兼任者や総務担当者が稟議前に押さえたい項目を十二に整理し、回答の読み方と再質問の例まで示します。

この記事でわかること

  • 回答を集める前に社内で決める条件
  • SaaS選定で確認する十二項目と回答の読み方
  • 「はい」だけで終わった回答への再質問
  • 証跡と残存リスクを稟議に残す方法

セキュリティチェックシートとは

セキュリティチェックシートとは、クラウドサービスの導入前に、利用目的、技術対策、運用体制、契約条件を候補ごとに照合する質問票です。IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」では、扱う情報の重要度、事業者の信頼性、利用者管理、バックアップ、契約終了時のデータ、保存先の国・地域などを確認点として挙げています。

チェックシートの役割は、絶対的な安全を証明することではありません。自社要件とベンダー回答の間にある差を見つけ、追加確認、利用条件、承認者を記録することです。たとえば「暗号化あり」という回答だけでは、通信中なのか保存時なのか、全データが対象なのかを読み取れません。

質問数の多さも品質を保証しません。同じ内容を言い換えた質問が並ぶ一方で、終了時のデータ返却や障害通知が抜けていることがあります。質問票を受け取ったら、まず自社の必須条件を十二項目へ対応づけ、重複と空白を見つけます。ベンダー独自の書式へ転記する場合も、元の要件番号を消さないようにします。

見る順番は、回答より先に自社要件です。同じSaaSでも、社内連絡だけに使う場合と、顧客情報や人事情報を保存する場合では、許容できる停止時間や必要な権限が変わります。

回答を見る前に自社の利用目的と情報の重要度を決める

ベンダーへ質問票を送る前に、「誰が、どの業務で、何を保存するか」を一枚にまとめます。ここが曖昧だと、ベンダーは一般的な回答しか返せず、社内では担当者ごとに評価が割れます。

回答を見る前にそろえること

  • 誰が、どの業務で、何を保存するか
  • 「必須」と「あるとよい」を分けます
  • 導入時の用途を基準にします
先に決めること書き出す内容判断につなげる問い
利用目的対象業務、利用部門、社外利用、連携先停止したら、どの業務が止まるか
情報の重要度個人情報、顧客預かり情報、機密情報の有無漏えい、改ざん、消失時の影響は何か
社内ルール保存場所、認証、端末、委託先に関する規程例外承認が必要な条件は何か
許容限度停止時間、失ってよいデータ範囲、復旧の優先順位未達時に代替手段で業務を続けられるか

管理されない社内ツールをそのまま本番利用すると、認証、権限、更新、バックアップ、問い合わせ先の責任者が決まらないままデータだけが増えることがあります。AIで作ったか、人が手作業で作ったかが分かれ目ではありません。本番運用の責任と手順が置かれているかで線を引きます。

この整理は、候補を減らすためだけに行うものではありません。顧客から預かった情報を保存しない運用に変えれば確認不要になる項目もあれば、外部公開やデータ連携を追加した時点で再評価が必要になる項目もあります。導入時の用途を基準にし、将来やるかもしれないことまで一度に承認しないほうが、質問と回答の対応関係を保てます。

また、「必須」と「あるとよい」を分けます。社内規程や取引先との契約で求められる条件は必須、運用で代替できるものは条件付きとして整理します。すべてを必須にすると候補が消え、すべてを条件付きにするとチェックシートが形だけになります。

SaaS選定で確認する12項目

12 項目の見方(3 グループ)該当する項目
利用目的・情報・社内ルール1. 利用目的・情報・社内ルール
対策と運用2. 事業者の信頼性/3. 可用性と障害通知/4. 管理者・利用者・認証/5. バックアップと復旧/6. 技術的な対策/7. 通常サポート・窓口/11. ログと監査証跡/12. 変更・脆弱性・事故対応
契約条件8. 終了時のデータ/9. 契約・SLA・責任分界/10. データ所在地と委託先

次の表は、IPAの十五の確認点と、経済産業省のSaaS向けSLAガイドラインおよび「III-6 SaaS・ASPのためのSLA」を、買い手が回答を読み比べやすい十二項目に再編したものです。回答例はすべて架空です。「よい回答」は合格を意味せず、自社要件に照らして追加確認が少ない回答の例を示します。

十二項目は互いに独立していません。たとえば「国内保存」と回答されても、障害解析や外部連携で国外処理が発生することがあります。バックアップがあっても、復元を依頼できる人、復元単位、所要時間が自社の業務に合わなければ、消失時の備えとしては足りません。項目名の一致ではなく、実際の利用経路を追って読みます。

項目確認すること根拠(IPA・経産省の項目番号)
1. 利用目的・情報・社内ルール対象業務、サービス種別、情報の重要度、禁止情報、社内規程IPA 1〜4
2. 事業者の信頼性運営主体、財務、利用実績、方針、認証の登録範囲IPA 5
3. 可用性と障害通知稼働率、障害頻度、回復目標、計画停止、障害連絡IPA 6/経産省SLA
4. 管理者・利用者・認証社内責任者、利用者範囲、個人ID、認証、権限、退職対応IPA 7〜9
5. バックアップと復旧対象、頻度、世代、RPO、RTO、復元手順、利用者側の責任IPA 10/経産省SLA
6. 技術的な対策通信・保存の暗号化、ファイアウォール、侵入検知、ウイルス・脆弱性対策IPA 11
7. 通常サポート・窓口受付時間、連絡方法、料金、FAQ、時間外条件IPA 12/経産省SLA
8. 終了時のデータ出力形式、期限、費用、移植性、削除、残存期間IPA 13
9. 契約・SLA・責任分界適用法令、再委託、保証範囲、未達時、免責、利用者の義務IPA 14/経産省SLA
10. データ所在地と委託先保存・処理国、バックアップ地域、委託先、変更通知IPA 14・15
11. ログと監査証跡記録操作、保持、検索、出力、閲覧者、調査時の提供IPA 11/経産省SLA
12. 変更・脆弱性・事故対応変更承認、事前通知、緊急修正、初報、続報、調査協力IPA 6・11・12/経産省SLA

表は左右にスクロールできます

項目よい回答の例(架空)注意する回答の例(架空)再質問の例
  1.  
用途と効果、扱える情報、例外承認の条件を資料で提示「どの業務にも使えます」のみ漏えい・消失・停止時の影響と、社内ルールとの不一致はありますか
  1.  
公表資料と登録番号、認証対象の組織・サービスを開示認証ロゴや導入社数だけを掲載継続提供を判断できる財務・実績・方針と、認証範囲を確認できますか
  1.  
算定式、除外、通知先、更新方法を公開稼働率だけを提示計画停止は稼働率計算に含まれますか
  1.  
管理責任と権限単位、停止手順、追加条件を開示「権限設定あり」のみ閲覧・出力・管理権限を分け、異動時に停止できますか
  1.  
取得条件と復元申請、手元に残すデータを明記「自動バックアップあり」のみ一件の誤削除でも戻せますか。申請者と費用はどうなりますか
  1.  
対象範囲と方式、点検の担当を分けて回答「業界標準で対策」のみ対策の対象外と、脆弱性修正の流れを教えてください
  1.  
通常問い合わせと障害窓口の時間・経路を明示「充実したサポート」のみ週末・夜間の問い合わせ先と追加料金はありますか
  1.  
返却と削除の時系列、バックアップ上の扱いを提示「解約後に削除」のみいつまで出力でき、いつ本体とバックアップから消えますか
  1.  
目標と契約義務を分け、優先文書も提示公開SLOをそのまま保証と説明未達時の扱いと再委託先の責任は、どの契約文書にありますか
  1.  
保存地域と国外処理の条件、委託先区分を明記「国内で管理」のみバックアップと外部連携を含め、国外処理はありますか
  1.  
記録されない操作も含め、一覧で説明「ログを取得」のみ閲覧とデータ出力は記録されますか
  1.  
通常変更と緊急時の連絡・調査の流れを提示「随時更新」「速やかに対応」のみ通知の起算点と、初報に含まれる内容は何ですか

RPOは、復旧時にどの時点までデータを戻すことを目標とするかを表します。RTOは、障害後どの時間内に業務やサービスを戻すことを目標とするかを表します。バックアップの取得頻度だけでは、どちらも確定しません。復元作業の受付時間や、テナント単位・レコード単位で戻せるかも合わせて尋ねます。

ログも「保存しているか」だけでは足りません。不正閲覧を調べたいのに閲覧操作が記録されない、退職者の操作を追いたいのに利用者名で検索できない、といった差が出ます。想定する事故から逆算し、誰が、いつ、何をした記録が必要かを質問文に落としてください。

「はい」だけでは判断できない回答と再質問例

短い回答がすべて悪いわけではありません。公開資料に詳しい条件があり、回答からその箇所へたどれるなら確認は進みます。問題になるのは、対象、条件、責任主体、証跡のどれも特定できない回答です。

問題になる回答

対象、条件、責任主体、証跡のどれも特定できない回答です。

再質問は四つの型で作る

  • 対象: どのデータ、機能、環境が対象ですか
  • 条件: 標準機能ですか。プランやオプションの条件はありますか
  • 責任: 誰が設定し、障害時は誰が復旧を依頼しますか
  • 証跡: 規約、SLA、設定画面、認証登録のどこで確認できますか

「対応しています」という返答には、例外と利用者側の作業を尋ねます。「個別に相談」なら、相談後の回答が見積書、申込書、契約書のどこへ残るかまで確認します。営業資料と利用規約で表現が異なる場合は、契約の優先順位を質問してください。

認証も同じ読み方です。ISMS認証があることと、候補サービスのすべての機能が個別に認証されたことは同義ではありません。認証登録番号、取得組織、登録範囲を確認し、自社が使うサービスがその範囲に含まれるかを照合します。

根拠文書の優先順位をそろえる

  • 回答を同じ日付、同じ利用条件へそろえます
  • 順序と効力を各社へ確認します
  • 標準とオプションを分けます

比較時は、回答を同じ日付、同じ利用条件へそろえます。ある候補は営業担当の説明、別の候補は利用規約という状態では、公平な比較になりません。規約、申込書、SLAやSLO、公式仕様、個別回答の順序と効力を各社へ確認し、条件が変わる機能は標準とオプションを分けます。

調査時点と条件を残します

競合比較を社内資料や外部記事へ転用する場合も、調査時点と条件を残します。消費者庁の比較広告に関する考え方では、主張の客観的実証、数値や事実の正確な引用、公正な比較方法が要件とされています。一部機能だけで製品全体の優劣を結論づけず、短所や追加条件も同じ場所に記載します。

回答・証跡を使った社内承認の進め方

回答を受け取ったら、セキュリティ担当だけで抱え込まず、業務責任者と一緒に未充足項目を整理します。製品側で満たせない条件があっても、保存する情報を減らす、権限を絞る、別のバックアップを持つといった運用条件でリスクを下げられる場合があります。

社内承認の進め方

  1. 未充足項目を整理します
  2. 運用条件でリスクを下げられる場合があります
  3. 残存リスクを記録します
稟議に残す欄記載内容確認者
要件と回答必須、条件付き、対象外の区分とベンダー回答情シスまたは管理担当
証跡根拠URL、文書名、版、確認日、個別回答確認を行った担当者
残存リスク不足項目、代替策、見直し日、事故時の連絡先業務責任者
採否と条件採用理由、利用禁止データ、設定期限、承認者リスクを受け持つ責任者

経済産業省「III-6 SaaS・ASPのためのSLA」が示すとおり、公開目標が契約上の義務なのか努力目標なのかで、未達時の扱いは変わり得ます。公開ページの数値だけを稟議へ転記せず、契約、申込書、個別合意との関係を確かめます。

承認後は、採用した製品名だけでなく、承認時の前提を運用台帳へ移します。保存禁止データ、管理者、利用開始前に有効化する設定、ベンダー情報の見直し時期を残します。用途追加、連携先追加、規約変更、重大な事故があった場合は、導入時の回答を使い回さず、影響のある項目を再確認します。

残存リスクは「問題なし」に置き換えません。たとえば時間外サポートが自社要件を満たさないなら、翌営業日までの代替手順と判断者を記録します。許容する人と期限が明確なら、未充足項目を隠さずに承認できます。

PigeonCloudの公開情報で確認できる内容

公開情報の確認基準日: 2026-10-16

PigeonCloudは株式会社ロフタルが提供するSaaSです。

項目内容出典
公開情報では、本番データベースを日本国内(東京)に配置し、保存データと通信を暗号化していること、WAF、脅威検知、権限設定、IPアドレス制限を案内しています。2段階認証はメールで届くワンタイムコード方式です。SSOはSAML 2.0に対応し、Google Workspace、Microsoft Entra ID、IIJを利用できます。セキュリティ
ISMSは株式会社ロフタルの認証です。認証基準はJIS Q 27001:2023(ISO/IEC 27001:2022)、登録番号はJQA-IM2071、登録範囲は「WEB、スマホ関連の受託開発及びノーコードデータベースサービス」です。PigeonCloud単体の製品認証や安全の保証とは扱いません。
公開SLOには稼働率99.90%、復旧実績の平均として「平均復旧時間 30分」、操作ログは管理画面から確認可能で保存期間の制限なしと記載されています。平均復旧時間は実績の平均であり、復旧までの目標値を表すRTO(目標復旧時間)とは区別します。製品機能として、データのバックアップを日次14世代(14日分)保持し、復元はサポートへの依頼を受けてロフタルが実施すると案内しています。サービスレベル目標(SLO)、機能一覧
条件のある機能として、クライアント証明書は有料オプション(月額200円/ユーザー)です。利用規約には現状有姿・無保証、利用者側のID・パスワード管理とバックアップの責任、サービスレベルを保証しない旨が記載されています。プライバシーポリシー、利用規約

公開ページは変更される場合があります。本欄は契約書、申込書、見積書、個別のセキュリティ回答を上書きしません。

PigeonCloudを候補にする場合も、この公開情報だけで社内要件を満たしたと結論づけないでください。利用プラン、オプション、保存するデータ、外部連携によって確認点は変わります。公開ページで根拠を確認できない項目は、利用条件を添えて個別回答を依頼し、その回答を稟議の証跡として保存します。

12 項目のチェックシート(表)と PigeonCloud の資料ダウンロード

項目確認担当確認日
1. 利用目的・情報・社内ルール
2. 事業者の信頼性
3. 可用性と障害通知
4. 管理者・利用者・認証
5. バックアップと復旧
6. 技術的な対策
7. 通常サポート・窓口
8. 終了時のデータ
9. 契約・SLA・責任分界
10. データ所在地と委託先
11. ログと監査証跡
12. 変更・脆弱性・事故対応

上の表は登録なしで転記して使えます。候補サービスごとに確認し、未確認の欄を残したまま関係者へ回してください。PigeonCloudの機能やセキュリティ情報を確認する場合は、製品資料をご覧ください。

PigeonCloud のセキュリティ資料を含む製品資料をダウンロード

資料の内容と上のチェック項目は同一ではありません。

この記事を書いた人
石川 傑也 Takuya Ishikawa
アクセンチュア株式会社を退職後、スタートアップ企業のエンジニアとして様々なサービスの企画・開発に携わる。 その後、株式会社ロフタルを設立。これまでの経験を活かし、DX・業務改善を進めるサービスPigeonCloudを開発。

データ管理、もっと簡単に。

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